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テナントとして建物を使う・改修するときの構造上の注意点

構造計算が必要な場合もあれば、

先にオーナーとの整理が必要な場合もあります。

テナントとして建物を借りていると、
重量設備やラックの設置、アンカー・開口の施工、
建物の使い方の変更などに伴い、
「構造的に問題ないのか」を確認する場面があります。

また、後から増設された中二階や床など、
入居前から存在しているものについて
「このまま使って大丈夫なのか」と問題になることもあります。

どちらも構造に関する問題ですが、
必要な対応は同じではありません。


今回の工事・設備設置・使い方の変更によって新たに生じる問題なのか。
それとも、既存建物にもともとある問題なのか。

まずこの違いを整理することで、
そのまま構造検討へ進めるのか、
先に建物オーナーと整理した方がよいのかが見えてきます。

1.まず「今回の計画による問題」か「もともとの問題」か

テナント側の構造相談は、大きく2つに分けて考えると整理しやすくなります。

今回の計画によって新たに生じる問題

  • 重量設備やラックを新しく設置する
  • 梁や床から設備を吊る
  • 梁・床・壁へアンカーを施工する
  • 床や壁に開口を設ける
  • 看板や架台を取り付ける
  • 保管物を増やし、床にかかる荷重が大きくなる
  • 事務所だった場所を倉庫や作業場として使う

テナント側の計画によって既存建物へ新たな荷重や影響が生じるため、
必要な構造確認を行うという流れが比較的明確です。

既存建物にもともとある問題

  • 後から増設された中二階
  • 仮設的につくられた床
  • 棚や架台を転用したような床
  • 構造的な根拠が分からない既存架台
  • 既存床の強度への不安
  • 古い建物そのものの耐震性

入居前から存在していたものについては、
テナント側だけで構造計算や補強を進める前に、
建物オーナーと整理しておいた方がよい事項がある場合があります。

2.今回の計画によって生じる問題は、必要な構造確認へ

テナント工事や設備設置では、建物オーナーや管理会社から、

「この設備を載せても問題ないことを確認してください」

「アンカーについて構造的な根拠を提出してください」

「構造計算書を提出してください」

と求められることがあります。

この場合、テナント側でまず確認したいのは、
オーナーや管理会社から何を求められているのかです。

  • 床が設備重量に耐えられることを確認したいのか
  • 梁が吊り荷重に耐えられることを確認したいのか
  • アンカーや接合部の耐力を確認したいのか
  • 既存建物側への影響まで確認したいのか

確認したい内容によって、必要な構造検討の範囲は変わります。

また、構造確認が必要になるのは工事を伴う場合だけではありません。
保管物を重くする、床を倉庫として使用するなど、
建物の使い方が変わるだけでも既存構造にかかる荷重は変わります。

3.既存建物にもともとある問題は、オーナーとの整理が先になることがある

少し注意が必要なのが、入居前から存在しているものについて、
「このまま使って大丈夫なのか」
「何とか補強して使いたい」
という場合です。

例えば、後から増設された中二階や、
仮設的につくられた床、
棚や架台を転用したような床などでは、
図面や構造計算書が残っていないことがあります。

構造的に調査・検討できる場合はありますが、
その前にテナント側で考えておきたいのが、
そもそも、この問題を誰が対応するのかという点です。

  • その中二階や設備を使用する前提で貸しているのか
  • 誰が安全性を確認するのか
  • 調査費用を誰が負担するのか
  • 補強や撤去を誰が行うのか
  • オーナーが補強工事を認めるのか

ここを整理しないままテナント側で調査や補強設計を進めると、
検討後に「補強ではなく撤去することになった」
「その工事は認められない」
「オーナー側で対応することになった」
と方針が変わる可能性があります。


構造的にどう解決するかという問題と、
貸主・借主のどちらが対応するかという問題は別です。

既存建物にもともとある問題については、
構造検討を始める前に、
一度この点を整理しておくことをおすすめします。

※建物オーナー側から見た「テナント工事で構造躯体をどう管理するか」については、
別記事で解説予定です。

4.構造検討をする場合でも、確認できる範囲は建物によって違う

実際に構造検討を行う場合でも、
「設備だけ」「アンカーだけ」「中二階だけ」を見れば
判断できるとは限りません。

設備の荷重は床や梁から柱・基礎へ伝わります。
吊り設備であれば、アンカーだけでなく、
取り付ける梁やスラブ側の確認が必要になることがあります。

また、既存建物では構造図や構造計算書が残っていないこともあります。
その場合は、現在残っている資料や現況から、
どこまで確認できるのかを先に整理します。

必要に応じて現地調査や部材確認を行いますが、
資料が不足している部分をすべて仮定して
「大丈夫」と判断できるわけではありません。

5.相談するときにあるとよい資料・情報

構造設計者へ相談するときは、
テナント側で次の資料や情報があると状況を整理しやすくなります。

  • 既存建物の図面
  • 構造図・構造計算書
  • 確認申請関係資料
  • 現在の状況が分かる写真
  • 今回予定している工事や使い方
  • 設備の重量・寸法・設置位置
  • アンカーや支持方法が分かる図面
  • オーナーや管理会社から求められている内容
  • オーナーとの協議状況

すべて揃っている必要はありません。
既存建物では、必要な資料が揃っていないことも珍しくありません。

その場合は、現在ある資料を確認したうえで、
何が不足しているのか、何を確認すれば次へ進めるのか
を整理します。

6.まとめ|最初に「誰の問題か」まで整理すると進めやすい

テナントとして建物を使用・改修する際に構造上の問題が出てきた場合は、
最初から構造計算を依頼すればよいとは限りません。

今回の計画によって生じる問題

必要な構造検討へ進みます。

既存建物にもともとある問題

先に建物オーナーとの責任範囲や費用負担を整理した方がよい場合があります。

この切り分けができれば、
強度・荷重の構造評価、改修設計、耐震診断、現地調査など、
次に必要な対応も見えやすくなります。

何を確認すればよいのか分からない場合でもご相談ください

弊社では、既存資料や計画内容を確認したうえで、
必要な構造検討の範囲や、
先に整理しておいた方がよい事項を確認するところから対応しています。

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